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liberteenしゅんすけのブログ

自分の備忘録です。

動画の編集2 調理(基本編)

動画編集のやりかた

この工程は単純に言えばカットを並べていくことですが、シンプルであると同時に奥深い作業であり総論で説明するのが困難です。ですがまずは基本に立ち返り、自分の体験を共有するための動画を作り始めた初心者を想定した編集方法の一例を説明します。長いですがご容赦下さい。

まずは下処理が済んだ全てのカットを、時間軸順に、つまり撮った順に並べて一度鑑賞することから始めます。同じ出来事を2回3回と撮り直したテイクが複数ある場合は、とりあえず一番良いテイクを採用します。すべてのカットを並べただけの動画をまず見ると「長いな、退屈だな」という印象を持つと思います。その印象つまり視聴者の目線を持つことが重要であり、その目線を持つことから編集がスタートします。まず最初は、同じことを伝えられれば動画の長さは短い方が良いという前提に立つのが良いと思います。完成した動画の長さを3分に収めようといったように、完成尺を決めてしまうのも一つの手です。編集ではせっかく撮影したカットに対してどうしても生まれる未練を振り切る気持ちも必要になりますので、完成尺3分といった無条件のルールを設けることで罪悪感を緩和できる効果もあります。もちろん作品を作る目的は、伝えたいことがあるからであり、動画をゴリゴリと削っていくことは最初は無駄が削がれて気持ちいいものの、途中から「これでは言いたいことが伝わらないのではないか」と危機感を感じるようになります。しかしそこからが、視聴者目線と発信者目線のせめぎ合いの始まりであり、極限のせめぎ合いからこそ良い作品は生まれるということをまずは信じていただきたいと思います。

 

一度動画を見返し、長くて退屈だと感じたら、次に動画のどこが冗長で退屈であるかを見つけます。そこを取り除いても一連の出来事や体験の共有に大したダメージを与えないカットであれば、思い切って削除します。1カットだけでなく一連のシーンをいったん消してしまっても良いです。(もう一度動画を見返して、前後のつながりが意味不明になるようであれば、アンドゥしてからもう一回考えます。カットの中の一部分だけを削除すれば事足りるかもしれません。)この一連の記事の冒頭であげた手巻き寿司パーティーのメモリアル動画であれば、無言で寿司を巻いているカットは不要か、あっても2秒で十分でしょう。いっぽう手巻き寿司ハウツー動画であれば、大学時代の思い出話はばっさり捨ててしまえるはずです。

退屈さの原因には、出来事の順序が悪いという場合もあります。時間的前後関係が重要でない場合は順序を変えるだけでメリハリが付いて面白くなることがあります。たとえば抹茶ジェラートをレベル1,4,7の3個食べたとして、実際は4→7→1の順序に食べたとしても、そのまま並べると最後の1が退屈になります。であれば1→4→7の順に並べ替え、さらに1と4の喋りの尺を短くすることで盛り上がる流れも出せるので退屈感は消えるはずです。

被写体が喋っているとき、喋りと喋りのあいだの間(ま)が退屈になるケースも多いです。この間(ま)は一つ一つはせいぜい1、2秒であっても積み重なるとボディーブローのように見る人のストレスを増大させます。手間のかかる編集ですが、喋りの間(ま)を細かく切りつめていくだけで会話のリズム感は向上します。絵を見るより音声の波形データを見ると作業が速いです。大抵の人は芸人のようにリズム良くまくし立てて話すことはできないものですが、見る側はそういった滑らかなトークに慣れすぎているのかもしれません。カットの入り冒頭と被写体の喋りの頭をぴったり揃えるだけでも気持ちよくなります。0.5秒とかの余白を念のために置くのは臆病さですのでそういう気持ちは捨ててよいです。

視聴者の目線で動画を見て退屈に感じる箇所とは、早送りしたくなる箇所です。視聴者目線とはこの苛立ちに敏感になることですが、言葉通り「早送り」をすることで退屈感を減らす方法もあります。所定のカットの再生速度を4倍〜16倍くらいまで早回しするという方法です。ただしこの方法は実はカットに対する未練を捨てきれない本心をごまかすために使ってしまうことがあります。手っ取り早く早回しに逃げる前に、まずはカット中の退屈な箇所を丁寧に切り詰めた上で最後に早回しをかけるのが良いと思います。とりあえず早回しで残しておいた未練がましいカットを最後の最後に結局バッサリ捨てたという経験は私にも何度もあります。

 

こういったダイエット作業を何度か繰り返したあと、あらためて動画を見返します。今回は、さきほどまでとは逆に、発信者目線で伝えたい事が表現されているか、撮影したときの体験や感情の起伏が再現できているか、という観点で見返します。動画の長さを短くすることに慣れてくるあるいはそれが快感になってくると、知らず知らずのうちに本当は動画を面白くしていた箇所をうっかり消してしまうことがあります。すると「すらすらとストレスなく見られるけど、何も印象に残らない」とか「短くて簡潔だけど、おもしろさがない」といったことになります。たとえば、だらだらと雑談しているシーンで、本人たちも退屈を感じていて、視聴者も同じような退屈を感じていて、そのあとでポロッと発せられた言葉が絶妙にその場の空気を描写していたとか。お店に入るまでの待ち時間で並んでいたときの寒さや空腹感が描写されていたからこそ、お店に入って出てきた料理のあたたかさを実感できたとか。たどたどしく間延びした喋りの中に映る恥ずかしそうな表情こそがその人の人柄を感じさせてくれる、とか。こういった、話の本筋とは関係ない部分に人生の機微というか、平たく言えばライブ感が潜んでいることもあります。まずは極限までダイエットした動画を見ることで、いったんは退屈だ余分だと思われたカットが持っていた価値に気づけるのではないかと思います。こういったカットを復活させるときだけは最初に決めた「3分ルール」を破って、3分30秒まで伸ばしてあげるのが良いと思います。まずは動画は短い方が良いという前提に立とうと言いましたが、ここの作業だけは多少動画が長くなってもそれを超えるおもしろさや出来事そして体験を生のまま作品に込めることを優先します。そうやって足された30秒により作品に命が吹き込まれ、動画全体をいきいきとさせてくれるはずです。

 

このように、手を入れては作品を見返すという作業を最低でも10回は繰り返してください。なお人間は同じものを見続けていると目が腐ってきて何が良いのか悪いのかわからなくなってきますので、ときどき気分転換してください。軽く運動をして血の巡りを良くするのがおすすめです。窓の外の自然を眺めるのも良いと思います。このようにして何度も調整を繰り返した結果、視聴者目線で最後まで退屈を感じず見ることができ、発信者目線で伝えたいことが表現できたと実感でき、なおかつ映像の中に体験のみずみずしさが残っていれば、調理の工程はほぼ終わりです。

 

最後に締めくくりとして、出来事の流れをより分かりやすくするためのトランジション効果を入れていきます。トランジションtransitionとは、移り変わりと言う意味で、カットとカットの間に演出効果を入れることです。トランジションは基本的なカットイン・ディゾルブ・ワイプ・黒へのフェードアウトの4つを使いこなせれば十分です。

カットインは前のカットと続くカットに何も演出を入れずにそのままつなぐことです。つまりトランジションを全く入れていない動画は、すべてをカットインでつないだ動画ということになります。カットインは一連のカットが連続した場面だという印象を視聴者に与えます。

ディゾルブdissolveとは溶けるという意味で、前後のカットが溶け合うようにゆっくり変わっていく演出です。OLオーバーラーップという言い方をする人もいます。ディゾルブはゆっくり使うと、前後で時間が経過して場面が切り替わったんだという印象を視聴者に与えます。料理を作っているところからゆっくりディゾルブして食卓のシーンに移るとすると、あぁこの間に料理が出来上がって食卓に家族が集まってきたんだなという理解を促します。ただディゾルブは短く使うことで、カットの中の不要箇所を削除するような編集によって生まれた前後カットの間のズレを均す(ならす)ことにも使われます。編集を続けていくと、とりあえずディゾルブで良いかと思ってしまい無自覚的にディゾルブを多用することもありますが、シーンの分離を意味しているのかシーンの連続を意味しているのかが分からなくなってしまうこともあるので注意が必要です。

ワイプもディゾルブ同様、場面転換を印象づけますが、ディゾルブが時間的な分離を印象づけやすいのに対して、ワイプは空間的な分離を印象づけやすいトランジションです。ワイプwipeはその名の通り、布で画面を拭くように新しいカットが古いカットの上にスクロールしながらかぶさってくる効果のことです。なおテレビの世界でワイプというと、画面の中に小さい小窓を置いてそこにタレントの顔を映しておくことを言いますが、このワイプ窓とは別物です。なぜテレビの世界であれをワイプと呼ぶのかは知りません。

黒へのフェードアウトは特定の出来事が終了したんだということを強く印象づける演出です。黒フェードしてからのカットインでは、それまでの出来事と関係ない出来事が始まったということを印象づけられます。いったん本編を終わらせてからおまけのシーンを入れるときなどにも使えます。フェードアウトする時間の長さや、絵のフェードアウト時間と音のフェードアウト時間を微妙に調節することで、与える印象を様々に変えることができるなかなか奥深いトランジションだと思っています。

トランジションは本質的には出来事の流れを作るか分離するかの2種類ですので、逆の使い方さえしてしまわなければ大丈夫です。たいていの編集ソフトにはトランジションのメニューが豊富にあり最初はあれもこれもととにかく色々なトランジションを使ってみたくなりますが、大抵の場合ろくなことになりません。料理にスパイスや調味料をあれもこれもと入れてみた結果、とても食べられない味のシチューが出来上がるようなものです。実際のところ奇抜なトランジションは動画のつまらなさをごまかしてくれるように見えて却ってそのつまらなさを浮き彫りにする効果しかありません。トランジションは基本的に見る人への気配りであり、出来事の流れをより分かりやすくするためのものだという基本を理解すればそういった失敗はしなくて済みます。

 

ここまで行うと調理は完了となり、次の仕上げ工程に移ります。