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編集の番外編 あふれたカットを活かす

どんなに退屈なカットであってもそれも含めてすべてが人生の軌跡でもあり、他の誰が見ても取るに足らないカットであっても自分にだけは特別な意味を持っていたりすることもあります。本筋にはどうしても馴染まない1つのカットがその日の感覚と感情の揺れ動きを他のどのカットよりも思い出させてくれる場合もあります。本稿ではそんな本筋ではないカットを作品に残す小技を幾つか紹介します。

 

1つめは、早めの段階で出来事のクライマックスに到達させ、その後の出来事をエピローグ的にないしは回想的に紹介していく方法です。たとえばスカイツリーに登ったという動画を作る際に、実際はスカイツリーに登るまでに買い物をしたり食事をしたりして2時間かかっていたとしても、実際の順序どおりに見せていくと、展望台からの眺望やその景色を目にしたときの感情というクライマックスに至るまで長々と引っ張る必要があります。そういう場合はとりあえず展望台に登る一連のシーンを先に見せて一旦の大団円を迎え視聴者に満足感を与えます。その上で実はお買い物もしたし食事も美味しかったよというサブストーリーを伝えることで、視聴者も広い心で全体の出来事を追体験することができます。一旦のクライマックスまでは視聴者のニーズに応えることを優先し、そこで視聴者と伝え手の間で感情的なエンゲージメントが生まれてからは、伝え手主導で出来事を追体験させていくという考え方です。

 

2つめは、本筋と違う要素やNGカットを最後のおまけコーナーにまとめる方法です。最近はあまり見ませんがジャッキーチェンの香港映画でクレジットロールにNGカット集を流すやり方に近いです。いったん本編は終わったのだから、おまけだからという建前を得られることで、他人にとっては本当にどうでもいいカットですらためらいなく掲載できます。とくにNGカットは、その日の出来事を描くという目的からはこぼれ落ちてしまうはずの、「その日に撮影という出来事もあったんだ」という体験の記憶を鮮明に蘇らせてくれます。時間が経ってから自分で作った作品を見返すとき、本編よりもNGカットの方を何度もプレイバックしてしまうという人もいるのではないでしょうか。とくに撮影当日にカメラマンに徹したため自身が出演しなかったという場合でも、あなたもまぎれもないその出来事の当事者であり、主役の一人でもあるのです。撮影終わりの「カット!」の一言だけがあなたがそこに存在したことの唯一のあかしであったとしても、その声をNG集に置いておけばその動画は「その場の出来事」と「撮影という出来事」の二重の体験の思い出をありありと鮮明に残してくれるのではないかと思います。

 

3つめは、冒頭のアタックに未練の残るカットを詰め込むという方法です。冒頭のアタックという言葉は便宜的に使っていて、アバンタイトルやプレタイトルと呼んでもいいし呼び方はなんでもいいですが、ここでは作品全体の雰囲気を醸し出し気持ちを盛り上げるための短いカットのつなぎ合わせという意味で使っています。アバンタイトルという言葉の意味とは異なりますが、何かしらの作品タイトルを画面中央に掲載し、その背景としてカットを置くと言うやり方でも良いです。この部分に5秒使うとして、1カット0.5秒であれば10個のカットを置けますし、10秒使うとしたら20カット置くことができます。没にしたけれど情景や人物の表情が印象的だったカットや、変な顔してるから使ったら怒られるだろう友達の顔など、心に少しでも引っかかったカットを遠慮なく盛り込めば良いのではないかなと思います。逆に冒頭アタックで1カットあたり2秒も3秒も使うと、視聴者はカットの流れに出来事や意味を読み取ろうとしてしまうので、あくまで1カット1秒以下で仕上げたほうが良いです。ちゃんとアタックを作る場合は没カットだけでなく、本編内の印象的なカットも勿論使います。

 

4つめは、画面分割をして似たような出来事・似たようなカットを一度に見せてしまう方法です。たとえば友達四人で上陸系のロブスターサンドを食べに行ったとき、四人それぞれが食べているシーンを見せたくてもどれも同じような表情で同じコメントを言ってしまっているから、順番に見せるとどうも退屈してしまう。でも誰か一人に絞るというのも残りの三人に角が立つということがあります。こういうときには思い切って画面を2×2の4分割にして、タイミングを合わせて四人で同時にサンドイッチを頬張るという絵にします。そうすると一体感も出て楽しい雰囲気も演出できます。ハロウィンパーティーなどのイベントに行って、同じような仮装をしている人の絵が沢山撮れてしまった場合などにも使えます。分割した4領域それぞれのカットイン・アウトのタイミングをあえてずらすことで視聴者の目線に混乱を与え量感を演出することもできます。分割のしかたは2×2の4分割以外にも、縦2×横3の6分割でも良いですし、縦1×横3でも良いと思います。ただ左右2分割は一対一の構図になり両者の対比や関係性や対立構造が意図せずして描かれてしまうこともあるので良し悪しです。