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liberteenしゅんすけのブログ

自分の備忘録です。

Autumn 2012

僕が人生で初めて佐世保の地を訪れたのは2012年の9月でした。あるいは8月の終わりだったかもしれません。佐世保にあるテレビ通販大手のT社は福岡空港から車で二時間という場所にあり、空港からT社へただひたすら車を走らせる時間はなにかどこか遠い寺か神社へお参りにいくような気分になったものでした。佐世保はとても静かで、のどかなところでした。T社に初めて訪れたときの記憶は、プレゼンの思い出もさることながら、その後の長い商談を終えたあとアキラさんが出前してくれて会議室でみんなで食べた長崎ちゃんぽんの麺が伸び伸びに伸びていたという思い出です。

Rが飛躍的成長を遂げることになる大きな転換点のきっかけはこんな感じで、2012年の秋に、日本の端っこにある町からはじまりました。

 

そもそも新しいブランドが専門局のテレビ通販という販路を求めるのは戦略としてはセオリー通りとも言えます。新しいカテゴリの製品は製品認知がまったく無いことに加えて製品価値・用途の十分な説明、さらにニーズの啓発も必要となるため、通販専門のテレビ局が行う1商品あたり20分や60分という尺との相性がとても良くマッチします。また通販専門のテレビ局は同一品番商品を他販路で販売されていることを嫌ったり、他販路での価格の荒れを嫌う傾向にあるため、新しいブランドにありがちな量販店やインターネット通販への販路開拓が充分でない状況を逆に強みにすることもできます。ブランドの展開初期は利益を確保することもさることながら、安定的な生産〜出荷のラインを確保することも重要になります(でないと早期の段階で終売扱いになってしまうこともある)ので、たしかに仕切値は厳しいながらも一定の出荷が見込める通販専門のテレビ局との付き合いはありがたい。じつはこういった理由からRもローンチ直後からとある別の通販専門テレビ局へのアプローチを行っていましたが、いろいろな問題がありなかなか採用には至らず、2012年の春と夏はテレビ通販の販路開拓については苦しい時期を過ごしました。

そんな中、とくに家電販売において強みを持つT社との商談にこぎつけた幸運の背景には二つの理由がありました。一つは、T社にとってRという製品が全く新しい未知の製品ではなかったという点です。実はT社は、僕がRをリブランディングして2012年春にローンチした数年前(たしか2年ほどまえ)に、自ら韓国の商談会に赴き、Rを買い付けて何度かテレビ販売を試していたという過去がありました。しかしそのときのコミュニケーションは前述したY社と同様、家じゅう除菌できるハンディ除菌掃除機というアピールであったため、製品は全く売れず、どうしようもない在庫が数千台放置されたまま月日だけが経っていたという状況でした。彼らにとっても如何ともしがたい在庫をどうにかする可能性があるという点でまずは話を聞く理由があったのでしょう、僕たちにとってもそういった過去はチャンスでした。もちろん、Rというブランドがふとん専用ダニクリーナーという切り口で全く新しいリブランディングを図り、市場でいくばくかの結果を出しつつあったという事実がなければT社も門戸を開くことはなかったであろうとは思います。二つには、T社自身の置かれた状況が、新しい市場を開拓する製品を求めていたという点です。それまでT社は家電に強いTVショッピングチャンネルとして着実にファンを獲得し業績を伸ばし続けていましたが、過去数年においては家電エコポイント需要の終息と地デジ移行のための大型液晶テレビ需要の終息をうけ業績の悪化が続いており、ただ既存カテゴリの商品を安く買い付けて巧みに売るだけでない市場創造型の商品獲得が求められていました。なおかつBS/CS専門チャンネルも苦戦を敷いられており、専門チャンネルの黒字化と会社全体としての取扱品目のアップデートが課題となっていたという背景があったようです。こういったT社の置かれた状況ゆえに、Rという製品の可能性への期待が存在していたのだと思われます。

T社との商談は当時社長だったアキラさんへのプレゼンから始まりました。プレゼンは、Rというブランドは完全に生まれ変わりましたというところからスタートしました。Rは掃除機ではないこと、除菌が目的ではないこと。そして布団はすべての家庭のすべての個人にあまねく存在していること。日本人は布団のケアが実は十分ではないこと。T社のメインターゲットであるシニア層にとっては布団干しの上げ下ろしが大変困難であること。そしてじつは布団にはダニという厄介な存在が潜んでいること。ママ&ベビーの次のお客さまとしてRはシニアの人たちに受け入れてもらう努力をします、ということがT社へのプレゼンの一つのテーマでした。この切り口により、T社に抱えさせてしまった数千台の在庫を捌(は)けさせたいのですという話をしました。アキラさんは黙って僕の話を聞いていました。もう一つ、テレビでの訴求方法についての提案をしました。それが、実際の布団による実演と言う方法でした。長年使ってきた布団をスタジオに持ち込み、その布団にRをかける。すると、ホコリやダニの死骸・糞がダストボックスに溜まる。それを見せる。それによって自分が長年体を休めてきた布団がいかに汚れていたかという実態を実感せしめることができる。そういう内容でした。この具体的な表現方法についての提案ももしかしたらアキラさんの心を掴み動かすきっかけになったのかもしれません。そしてしばらくの会話のあと、まずは一回僕の提案した方法でオンエアをしてみよう、まずは一回チャレンジしてみようということになりました。もちろん僕は一瞬で在庫がさばけることを確信していました。

 

結果はあっけないほど明確でした。数千台あった在庫はオンエア後すぐに売り切れ、すぐに新規注文の仕切値とオーダーアマウントについての商談がスタートしました。並行して、番組ディレクターならびにMCさんとの番組作りについての打ち合わせもスタートしました。結果は上々でした。それまでの家電量販店における販売数量を大きく上回る販売を達成し、毎月それを更新し続ける状況が続きました。RというブランドのリブランディングはもちろんR社を救い、のちにT社をも救うことになりました。

続く