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liberteenしゅんすけのブログ

自分の備忘録です。

ハエトリソウ

昔、そう実家に住んでいた頃だから、十代のころに、ハエトリソウを買って、窓際のベランダで育てたことがありました。
ハエトリソウというのはいわゆる食虫植物で、二枚の葉っぱが閉じて蝿などの虫を捉え、それを栄養にして育つ植物です。食虫植物を育てていたといっても、とくに虫を捕まえてピンセットで食わせていたといったことはせず、単に水をあげて太陽の光に当てていただけでした。

余談ですがハエトリソウは気温が低く日の当たりにくい湿地帯で生育している植物だと、なにかで読みました。寒くて日当たりの悪い湿地帯なので太陽の光や土の養分で十分に育つことができず、ゆえに昆虫の栄養を必要とするようになったのだとか。因果関係はよく分かりませんが生物の適応する力はすごいものなのでしょう。

ハエトリソウは虫の栄養を吸収するといっても基本は草ですから、水をあげて、太陽の光の下に置くだけですくすくと育ちました。例の虫を捕らえる感じの二枚貝のような葉っぱもすくすくと育ちましたが、僕のハエトリソウが虫を捕らえることは、育てているあいだじゅうは無かったように思います。これもなにかで読んだ話ですが、食虫植物が虫を捕らえる際に使うエネルギー、つまり葉っぱをキュッと閉じる際のエネルギーは植物にとっては凄まじく体力を使うものらしく、2〜3回葉っぱを閉じる動作をするとその葉っぱは枯れてしまうのだとか。たしかに植物というのは我々のような動物とはまったく違う時間軸で生きていますから、虫を捕らえるほどのスピード感というのは、例えるなら僕らにとってはビルの3階から飛び降りてでも空を飛ぶ青い鳥をつかまえるぞ、という位の賭けなのかもしれません。骨折れますよね。死ぬかもしれない。

そんなこんなでハエトリソウを育て、幸いなことにうまく育ち、例の二枚貝のような葉っぱが生い茂り、そうこうしているうちに花の芽が生え始めました。ハエトリソウだって勿論植物ですから花を咲かせて種を実らせ子孫を残すわけですね。花の芽は生え始めたかと思うとぐんぐんと伸びてあっという間に高さ25センチくらいまでの高さにひょろ〜〜んと伸びました。二枚貝のような葉っぱが地面すれすれに沢山生えているなかで、細長い茎が25センチくらいまで伸びて、その先端に花が咲いているという具合でした。僕はこれに驚いてネットか何かを調べたところ「ハエトリソウは昆虫を食べてしまうため、葉っぱの近くに花が咲いたとしたら虫に受粉してもらうことができない。そのため受粉のために花を咲かせる際には食虫用の葉っぱとは出来るだけ離して花を咲かせるように進化した」といったことが書いてあり、さらに驚きました。たしかに合目的的です。だから、ハエトリソウという草は、自分が虫を食べてしまうということを知っていて、でありながら自分が草として繁殖するためには花を咲かせて虫に来てもらう必要もあることを知っていて、だからこそ食虫葉からできるだけ遠ざけた遠いところに花を咲かせるようにひょろひょろと花茎が伸びるように進化を遂げてきたんだな、というふうに理解しました。
でもこの話を大学に入りたての頃、大学の友人のS君に話したら、「生き物は自分の意思で進化してきたわけじゃない。無作為な進化があって、その結果淘汰されて、生き延びてきただけだ」という話をされました。なるほど。ハエトリソウは自分の意思で花茎を伸ばしたわけではない。たまたま花茎が長かったハエトリソウだけが生き残ったんだ。そうなんだ。

そのころはそういうふうに納得したんだけど、でも今あらためてなんとなく思うのは、ダーウィンが何と言おうと、しんじつが何であろうと、ハエトリソウは自分のこと分かってたんじゃないかと思う。あるいはそう思いたい自分がいる。ハエトリソウが花茎を高く高く伸ばしたのはたまたまの偶然じゃなくて、なにか意思の力が命には宿っているんだと、思いたいんだろうなと思う。

ハエトリソウはとても美しい可憐な花を咲かせました。